日記

岩手に行って自由を謳歌しすぎたせいか、仕事が途切れ途切れでペースが掴めないせいか、それとも飽きて気分が間延びしてしまっているせいか、いずれかはよく分からないが、ここのところ仕事で人と接することによる精神の消耗が激しい。
そんな時期に、3つある仕事のいずれでも「高橋くんダメだね〜」というような評価を直接、間接、あるいはそこはかとなく戴き、かなり精神が削れた。ついでに金もすっかりなくなり、貧乏病が焦燥を煽る。家に帰っても何度も読んだ漫画をボーっと読むか、現実逃避のロマンシングサガ3しか出来ない状況がしばらく続いた(ゲームに手を出したのは半年ぶりだ…)。甘い菓子をバカ食いしたり、中途半端に忙しいのとネズミがうるさいので寝不足が続いたり(ひょっとして寝袋で寝ているのも良くないんだろうか)、不毛な日が続いた。ぶすぶすとネガティブな思考がループする。

21日、グループ展を介して知り合いになった方から自宅に招かれて、教えて貰わなかったらまず出会わなかったであろう、素晴らしい写真をたくさん教えて貰う。ここで一発奮起して写真の作業に取りかかるのが筋だろうが、絶不調の自分、今自分の写真を見たら精神に大ダメージを被るだろうと思い、ダラダラと過ごす。自分の写真を取捨するのは思いの外気力と集中力がいる。累々と積み重なる駄作を前に、あれだけ時間と金と労力をかけたのに…!という思いが渦巻いてしまうのだ。

22日、仕事を終える。これから12月に入るまで仕事の予定はない。財政的にはとてもまずいのだが、久々に気力が戻ってくるのを感じる。しかしまだ写真をいじくるまでは回復していないだろうと思い、本でも読もうかと本棚を物色、谷川健一の『日本の地名』を取り出す。随分と長い間、技術書以外の活字だけの本を読んでいなかった。以前は退屈だと感じた内容も、興味深い。というより、こんな面白い話を何故退屈と感じていたのかよく分からない。
23日、ゆっくりと午後に起きる。久々に天気が良いのにだいぶ日が傾いていて、損した気分になる。
起きて早々、朝食もそこそこに、午後の柔らかい日差しを楽しみつつ、やろうやろうと思っていた作業を進める。まずは、フィルムスキャナのフィルムホルダを、きちんとフィルム全面が取り込めるようにヤスリでガリガリと削っていく作業。プラスチックの粉末が飛散するので屋内では出来ない。この作業が出来なかったせいで、135フィルムのスキャンが滞っていた。12面ある上に、スキャナを通して確認しながらの作業なので、結構面倒だ。
目途がついたら、今度はやはりやろうやろうと思っていた、庭木から葛なんかのツタを取り除く作業。紅葉目前、伯楽の秋の景色を撮るのに備えてである。今年は随分繁茂したなぁと思っていたが、取り除いてみるとドウダンツツジ樹冠には葉が付いていない。もっと早く手入れをしてやれば良かったと後悔…繁殖を欲しいままにしていた葛の根本は、なんと直径5cm以上になっていてびっくりする。先月だったか、久々に父と一緒に買い物に行って買って貰った鉈がここでも大活躍だった。
刈り取りついでに、周辺を少し散歩しながら薪を拾う。カラマツの周辺は随分長いこと立ち入っていなかった気がする。この辺りはOさんが畑仕事の往復に使っていた他、ハンモックもあったりするのだが、近頃誰も立ち入らなくなっていた筈。荒れているに違いないと思いきや、ジョーンズが刈ってくれたのだろうか、疎林の雰囲気を楽しめた。この辺りで撮った写真はお気に入りが多いだけに、安堵である。
こちらも久々、ゆっくりと鶏たちを眺める。黒の烏骨鶏たちはすっかり大きくなった。以前は田中の4分の1くらいだった体格が、今は3分の1から2分の1くらいになっている。一羽は何故か白髪交じりだ。田中は直立不動の体制でこちらを見つめていたが、その姿勢のままちょっと力んだかと思うと、予想の通りぽろっと糞をした。それを見て満足し、部屋に戻る。
天気はいいし、久々に自分のことだけを出来るし、とても気分の良い一日だった。