月明かり

曇っているのに明るい。さすが筑波、さすが伯楽。でも大井沢の月明かりはもっとすごかった。日暮沢登山口から大井沢の集落まで、ほぼ2時間の林道歩きなのだが、その途中でとっぷりと日が暮れてしまった。どんどん視界がぼやけていくと思ったら、突然車のヘッドライトで照らされたような強い光を感じた。振り向くと、三日月から一日経ったくらいの細い月が木々の影から出たところだった。林道が銀色に光っていたのが忘れられない。
飯豊の登山口のひとつである川入の畑で、おじいちゃんから、若かった頃お祭で昂揚してしまい、大した準備もせず若い衆で連れ立って月明かりのなか本山まで登って帰ってきたという話を聞いたが、それもあり得る話だなと思った(ちなみに旧暦が生きていたころは、祭は大抵満月か新月の日であったそうな)。こういう場所での満月の明かりと、それがもたらす高揚感はそれだけの力があるに違いない。