雨引の里と彫刻2013

仕事をお手伝いしている方の縁で、野外彫刻展である「雨引の里と彫刻」、2011年の回には多少の関わりを持たせていただいた。恥ずかしい話、もともと美術に大した興味はなかったのだが、仕事を通して一流の作品を見るこ機会に恵まれ、曇り眼も多少は開き関心も出てきた。この彫刻展はそうした機会のなかでも最も大きなものだ。舞台となる大和村(現桜川市)は、取り立てて景勝があるわけではないが空気が澄んで景色も良いところで、いまだ茨城の多くを識っているわけではないが、茨城でももっとも美しい場所の一つだと思う。そう思わせてくれることに、作品群の大いなる助けがあったことは間違いない。調和している…というよりかは、作品があることによって気付かされる風景があるというか、風景の力点が変わる感じがある。今回2013年の開催には仕事で関われなかったものの、急ぎ足で作品を見てきた。作品を撮っていたつもりが、作品の写真にはろくなものがあまりなく、景色の写真ばかりになってしまったがご容赦願いたい。


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海崎三郎/点在II

海崎氏の前回の出展作は広い野原に鉄製の井戸のような矩形の囲いがあり、そこに長大な角の鉄柱が刺さっているという、度肝を抜かれるものだったが、今回は一転静けさと密やかさに満ちた作品であった。ゆったりと波打った鉄板に、静かな水面に水が滴り落ちるような突起が点在する。鉄でこのような柔らかな表現が出来るのかと驚いた。



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齋藤さだむ/不在の光景partII

齋藤氏の前作は、ゲートボール場の倉庫兼休み場の小屋いっぱいにキッチュな観覧車の大延ばし写真を並べたもので、現におばあちゃんたちが使っている、人の気配に満ちた小屋の佇まいと観覧車のポップさが合わさって得も言われぬ面白みがあったが、今回はお堂での展示である。写真も打って変わって被災地のものが並び、その上にはお堂に半ば朽ちるようにしたあったという観音像と十二神将像を撮影したものが並んでいる。被災地の写真もさることながら、この物撮りが猛烈に良い。


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高梨恵理/深い水II

暗い写真で恐縮だが、木立の中に紛れているような感じが気に入ってこのままにした。木彫で木の質感が心地良い一方、体の組織か、海の底にただ在るようにして生きているような何かの生き物を想像させるような感じがある。



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もう一枚


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山本憲一/剪定季の風


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このお宅の裏の物置に、打ち棄てられたものと半ば同化して西成田洋子作品が展示されている。この家、少しおどろおどろしいがまだ住めそうである。住みたい。


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大和村にはいくつか溜め池があって、景色に変化をもたらしている。これだけ溜め池がある地域というのは、茨城では珍しいのではないだろうか。奥は加波山


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これは帰り途中の写真で、場所もつくば市に入ったところなのだが、何となく一貫性があるような気もするので載せておく。祭神は確かめなかったが、水関係の神様かもしれない。


Small Shrines and Mt.Tsukuba

上の神社と道を挟んだところにある末社。奥は筑波山。寂しいが気持ちの良いところである。


A Gray Heron

移動中にアオサギに出会った。鷺は好きな鳥で、このアオサギもわりと近くにいたので写真を撮ろうと近寄ったら、カラスのごとく電柱に乗った。


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ピントが悪いが、夕日を受けて山が紫に染まる、巷に言う紫峰である。まぁ一般に紫峰というと筑波山を指すのだがこちらは加波山



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井上雅之/A-135

遠目からでも分かる大きな丸が、良い感じに異質さを放っていた。この作品のすぐ横に農家があるのだが、そこの親父さんが何とも言えない表情で庭仕事をしていた。農家、おやじさん、そしてこの作品という関係性、組み合わせは多少の緊張と不協和を出しつつもどこかユーモラスだった。