展示写真解題その2

Pueblo Callado

川内村いわき市戸渡、三春町、浪江町津島、飯舘村など、阿武隈山中の町や村を訪れた記録。





Rainbow, Downtown of Miharu Town

2011年4月20日放射能禍で人足が遠のいているという三春の滝桜を見に行った。10年前、余った青春18きっぷの消費に、何となしに三春を目的地に定め滝桜を見に行こうとしたものの、駅から遠くて諦めた、そのときのリベンジだ。人が少ない、といっても日中には付設の駐車場は満杯になった。開花は2分〜3分で控えめなものだったが、この2日後、藤原新也氏が訪れたときは満開になり、しかも異常開花だったという。三春は谷あいに立地し、中世の街の面影を色濃く残している、小さく美しい街だ。神社仏閣が数多くあり、高台に登れば、桃、梅、桜が一度に咲くという三春の名の由来となった景色を一望出来る。写真は中心市街地に掛かっていた虹。このとき、町のモニタリングポストでは0.49μSvを記録していた。



R399 Crossing, Kawauchi Villege, Fukushima

川内村国道399号線の交差点。2011年4月21日撮影。翌日から、それまで行き来自由だった福島第一原発から半径20kmを立ち入り禁止とする措置が取られる前日である。かつて盛夏、川内村獏で行われる「満月祭」に参加するであろう黒人のお兄ちゃんがヒッチハイクをしていた交差点に、このような物々しいものが出来るとは想像だにしなかった。検問の向こうは富岡町に向かう道路。線量計を持たない自分はここより先に進む勇気?がなかった。このとき、村役場のモニタリングポストの値は0.5μSv。



Henhouse, Iwaizawa Miyakoji Dist. Tamura City Fukushima

2011年4月20〜22日の間、川内村にあるニシマキさんのお宅に居候した。その最後の日、ニシマキさんのお知り合いを介して、田村市都路地区(旧都路村)の養鶏家が廃業するので、鶏たちの引き取り手を求めているとの情報を聞き、引き取り手に立候補した。養鶏家の方は大変に鶏を慈しんでいて育てられていて、餌も自家配合の立派なものだった。廃業を決めるに当たって様々な思いが去来したことと察するが、そんなことは顔にも出さず、初めて訪れる我々を暖かく迎えて下さった。頂いた鶏たちは、昨年の猛暑で3羽がやられてしまったが、2羽は今も元気に質の良い卵を産んでいる。2011年4月26日〜5月12日に田村市によって行われた線量調査では、都路町岩井沢字平内地で1.15μSvを記録している。



Silent Henhouse, Towada, Iwaki City

いわき市戸渡はいわき市の中心地区から酷道ともいうべき国道399号線のつづら折りカーブを登って車でおよそ1時間、30kmほど離れた、10戸しかない小さな集落である。阿武隈山中にあり、付近の集落から隔絶した距離にある。この隠れ里のような集落にある分校跡に、縁があって2007年にお世話になってから、数度訪れていた場所だった。志のある人たちが移住して、自然食のお菓子や有機農業、自給自足などの生活を送っていたが、原発によってそれも打ち砕かれた。写真は廃業してしまったと思われる養鶏家の鶏小屋。399号線沿いに看板を出していて、自分も一度挨拶したことがあったと思う。2012年2月11日撮影。このとき、手持ちの安物ガイガーカウンターは0.5〜0.6μSv。




Mariyama, Kawauchi Village


川内村下川内字マリ山。川内村は何かと縁があり、2007年に初めて訪れて以来、何度かお邪魔していた。お邪魔していたものの、人を訪ねてばかりで自分できちんと回ったことがなかったので、地理を把握すべく村内を回った。マリ山は沢沿いの細い道を数km遡上した場所にある、わずか2軒だけの集落だ。まったくの山中だが平坦地は広く、耕地も十分にある。沢が流れ、水も豊かそうで、ちょっとしたアジールのような場所である。訪れたときは積雪があり、強風で起こる地吹雪とめまぐるしく変わる雲に魅せられてずっと写真を撮っていた。そのうち2軒のうちの1軒の方がこちらにやってきて、しばし世間話をしたあと、お茶に招いて下さった。豆炭のコタツに当たってミカンを剥き、2匹の猫がじゃれ合うのを眺めながら、避難の話、WBCを受けに行った話、警戒区域の牛を処分した話など、様々な話を伺った。日もすっかり落ち、おいとまして玄関を出たら、あまりの暗闇に思わず感嘆の声を上げてしまった。このとき、手持ちの安物ガイガーカウンターでは0.9〜1.0μSv、お話でも1.0μSvくらいとのことだった。2012年2月12日撮影。



Minamitsushima, Namie Town

3月20日いわき市での午後からの仕事を控えて、かねてからの念願だった国道399号線を走ることを思い立った。阿武隈山地のただなかを南北に走り抜けるこのルートは、現在では放射性物質に高濃度に汚染された地区を結ぶルートとなってしまった。写真は浪江町南津島字前沢。以下、全て2012年3月20日撮影。



Tsushima, Namie Town

浪江町津島字大高木。耕作放棄され、雑草がはびこってしまった斜面畑が痛々しい。人の気配はない。このとき、手持ちの安物ガイガーカウンターでは1.72μSv。


Crossing of R399, Nagadoro Dist. Iitate Village

飯舘村長泥地区の辻。津島、山木屋と、高濃度に汚染された地区の名が青看板に刻まれている。人の気配はない。このとき、長泥地区のモニタリングポストの線量は5.89μSv。




Nagadoro, Iitate Village

飯舘村長泥地区概観。この先、1〜2kmほど山中に入ったところでダッシュボードの線量計は7.34μSvを記録した。