ついに伯楽寮最後の時

写真展の時に「伯楽寮がなくなる!」と僕が騒いでいたので、多くの人は僕も新たな土地に引っ越したのかと思っていたようだが、ここを読んで貰えれば分かる通り、まだ伯楽にいる。伯楽寮は二棟あって、最初に建てられ、メインの雰囲気満点で造りも良いほうが取り壊され、おまけのように隣接しているバラック同然のショボいほうが残されたのだった。僕はそのショボいほうにまだ居座っているわけだ。
全廃ではないのに、「終わるよ!」と騒いだのは、自分は、そして多くの住人たちもメインの棟が無くなったら伯楽は伯楽でなくなるだろうと思っていたからだった。人無くして場はあり得ない(バラック棟に常時居るのは3人のみ)し、その人が集まる環境を作り出していたのはメインの棟の構造によるもの(とそこに住んでいた住人さん達の努力!)だった。取り壊されてみると実際、虚ろな感じになり、スモールパラダイスというか、箱庭のような感じは失われてしまった。集まろうにも集まりにくいし、集まったところで以前のような不思議な、何とも言えない雰囲気は出なくなって久しい。誰かが「ロスタイムみたいなもんだ」と言っていたが、まさにその通りな状態が続いてきた。
で、立派なほうを取り壊したときは、大家さんは「あと3年くらいは…」みたいなことを言っていたのだが、ここに来て突然、廃止決定の張り紙が。体のあちこちを痛め運転が辛くなってきたのと、家族の強い押しがあってのことらしい。来年度末で終焉を迎えることになりそうだ。残った住人も、海外旅行に行ってまだそのことを知らない人間の他は、「まぁしょうがないか」という気でいる。猫ちゃんと田中の処遇だけが気がかりでならないが。

伯楽、全くもって得難い場所だった。ここのおかげで自分の人生は大きく変わった、というよりも燻っている何かを後押ししてもらったし、とても大きく視野が拡がった。その結果がどう出るか…多くの人は、そして自分もかなり危ぶんでいる。でも、例えこの先苦境に立たされ、どうにもならなくなったとしても、ここに来ずに悶々としつつもその理由が分からず、ちっぽけなプライドにしがみつきながら退屈な日々をやり過ごすよりかは良かったと思う。