自転車の顛末

まとめ
鍵二つしてたのに盗まれる(ただし無料の駐輪場)
ヤフオク上で酷似した自転車を発見!ていうか傷まで同じ!
→取引件数と内容から業者と判断、オークションページの情報とIDから業者を類推ではあるが特定
→警察に通報、刑事課の刑事さん説得して店まで同行してもらう
→刑事さん尋ねると店側が自転車出してくる
→車体番号で同定
→刑事事件として立件、盗んだ犯人逮捕、でも店はそのまんま似たような品をオークションでも出品中


東京に行く用事が出来て、時間もなかったので、つくばセンターノバホール隣のさくら大橋(ペデストリアンが学園線を跨ぐ橋です)の下に自転車をとめてTXに乗った。とめる時には結構がっちりしたU字のパイプ錠を前輪に掛け、ワイヤー錠を柵に引っ掛けて固定しておいた。
その後東京でグータラしてしまい、まいっかと実家へ帰宅。その後はお決まりのダラダラコースで、あっという間に3日が経過、ようやく3日目の夕方にセンターに着いた。
…と、自転車に乗ろうとしたら、なくなっている。鍵で固定したのだから切断しない限り移動は出来ないはず。駐輪違法地帯でもないから行政が自転車を撤去することもないだろうし、第一行政は太い鍵切断してまで撤去しない。念のため撤去自転車が集められる場所も覗くがやっぱりない。西武やオークラ、図書館の駐輪場も探すがやっぱりない。仕方なく諦め、駅と共に出来た真新しい交番へと向かう。
被害届なんか出しても警察はまず捜査しないし、防犯登録のシールなんて真っ先に剥がされるだろう。とはいえ万に一つの望みをかけて被害届を出す。お巡りさんは茨城弁で優しく同情してくれた。現場行って状況を説明、お巡りさんはメジャーでいろいろ測ったり、図を書いたりしていた。ダメもとでセンター近くのリサイクルショップを覗いてみるが、ない。1時間半かけてとぼとぼと徒歩で帰宅。えらく蒸し暑かった。


…あれだけの鍵を破壊した、ということは犯人は予め俺の自転車に目を付けていた玄人だろう。今頃パーツに分解されて遠くに転売されているに違いない、と考え無気力にひねもす過ごす。そもそも例え近所で丸ごと売られていたとしてもつくばなので10km単位の話だ。自転車がなければやりようがないし、自転車でも効率が悪すぎる。次第に諦めムードになり、懲りずにお金貯めて今度はクロモリのツーリング車にしようとか、どうしようもないことを考える。それでもネットオークションとGoogleの検索だけは一日に何回か行う。

そうすると翌々日、ヤフオクにどう見ても俺の自転車としか思えない自転車が出品されてるではありませんか(→ページはこちら、魚拓はこちら)。標準のドロップハンドルをブルホーンハンドルに換えるという、しち面倒くさいことをやってもらったので一目瞭然、俺の自転車だ。まさかこんなにばれやすいところに、分解もせず出品するとは思いもしなかったので嬉しさがこみ上げる。倒して曲げてしまったデュアルコントロールレバー、同じく倒して破いたバーテープ、キャリアの着脱で付けた傷、タイヤの減り具合、何から何まで一緒である。ご丁寧に何枚も拡大写真載せてくれていたので、北海道行ったときにサドルに付けられた、キタキツネの咬み跡まで写っている(→写真の魚拓…1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8,9, 10)。さらに、出品者は大量に出品していて、自転車の台数も多いがその他の出品物の内容は如何にもリサイクルショップ然としている。さらにオークションの説明文に「茨城県つくば市 (桜土浦インター近く)からの発送」と書いているから、「リサイクル 桜土浦」とググったらここがあっさり出てきた。店名とYahoo!のIDも類似していることから、ここに違いないのではないかと確信めいたものを覚える。
しかし、「前の持主とは面識がないため、使用状況・年式等は不明です。」とは良く言ったもんだ。そりゃないに決まっているよな。まるで個人出品であるかの物言い…面識が無ければどのように仕入れるというのだ。俺は、この一文が添えられているオークションの自転車はみんな盗品と分かって売っているのではないか、と思う。

深夜3時だったが居ても立ってもいられず、警察に電話する。ありがたいことにちゃんと応対してくれて、管轄の課に連絡しておいてくれるとのことだった。
一応昼間になったら刑事課にも電話してみてくれ、ということだったので恐る恐る電話する。かなーり怖そうな人が出て、しどろもどろになりつつも説明する。
俺が幾ら特徴が酷似していると主張し、それを他に認めてくれる人が居ても決定的証拠にはならないらしい。店もきちんと明記しているわけではなくあくまで俺の推理なので、結構腰は重めだ。結構激しい?やりとりというか俺がねじこんで、オークションのページ、写真と俺が一応記念で撮っておいた自転車の写真を片手に警察署で会うことに。その長丁場のすぐ後に生活安全課の優しそうなお兄さんからも連絡があって、Yahooに照会をしているところだ、と言われるも、まぁ店も目星がついているなら刑事課のほうがいいですね、と切られてしまう。あまりの対応の違いにだいぶお兄さんが名残惜しかったが、すぐ動いてくれるのは刑事課の人だろう、と自分を説得し、警察署へ出かける。実際のところ、照会したって結果が出るころにはオークションは終わってしまっている。終わってしまうと盗品あろうとも売買契約は覆せない、とのことだ(そうなのか?と思うが)。
行って廊下で待っていると刑事さんとおぼしきおじさんに、いきなり挨拶もなしに
「電話の人?」
と話しかけられびっくらこく。面食らいつつも名乗りつつ相手の名前を確認する。
すると
「見せて」
となってまたびっくらこく。何をだろうと数秒考えてしまった。刑事さんというのはこういうものなのか。
印刷したページを見せるも、細かい写真を刷ってこなかったのを叱られる。だってうちのプリンタ金食い虫だし…第一警察署内にパソコンもプリンタもたくさんあるじゃない…と内心うそぶくも謝る。そのあとまた軽く問答になり、確証ないんでしょ?とか、自分で行って確認してこなきゃこっちも動けないとか、色々言われる。それでも、自分だけで行っても白を切られるかも知れないし、何より証拠隠滅されたらたまったもんじゃないと訴え、結局一緒に疑惑の店まで行ってくれることになる。まぁ、実際のところ俺が可哀想なくらい憔悴していたんじゃないかと思う。
ということで強面の刑事さんと不敵な笑みを漂わせる刑事さんとドライブ。鑑識箱と一緒に後部座席に居るとちょっと捕まった気分です。しかも行ったはいいものの事務所が見つからない。携帯のネットで店のサイトを見ようとするも変な作りで上手く表示されない。頼み込んで付いてきてもらったのに目的地分からないなんて、もうこれは焦らないわけにはいかない。ただ刑事さんはちょっとのんびりで、俺が「道路沿いですぐに分かるかと思ったんですけど…」と苦し紛れに呟いたら「俺もそうう思ってた」と返してくれた。
事務所が見つからないので店舗へ行くことにする。店舗はわりあいすぐに見つかった。オークションのページには火・金休と書いていたのでやっていないだろうと思って、だからこそ事務所へ行こうとしたのだが…普通に営業していた。
店に着く。強面、不敵な笑み、おどおどした学生みたいなのの3人連れ、目立たないわけが無く店の人が恐る恐る声を掛けてくる。俺は白を切られないよう、ここでどう探るかが肝要!まずは店に陳列されているものを一通り見て…とか色々段取りを考えていたのだが、刑事さん、ダイレクトにオークションの印刷見せて尋ねましたよ!
しかし店の人も十分に只ならぬ雰囲気を察知したのか、というか相手がどう見ても刑事さんだからか、微妙な間を置いて
「…あります」
と言い、おとなしく自転車を出してきた。

掃除され、付属品が取れてさっぱりしてしまっているがやはりまごう事なき俺の自転車だ!はやる気持ちを抑え、早速車体番号を照合、ぴったり一致する。そうなると刑事さんたちの形相も厳しくなる。まず写真を撮って、自転車をこちらに返してもらうと、買取伝票を丹念に調べ始めた。「これ丸ごと貸してもらえます?」「指紋採って真っ黒になっちゃうけどもいい?」なんて応答をしている。店の人のほうも絞ればだいぶ油が出そうな感じだったが、おとなしく刑事さんに名刺を渡し、捜査に協力していた。
しかし、店の人間も刑事さんが
「これは盗品だと分かって、こちらに被害届を出した被害者の方がいますので、返してもらえますか?」
訊いたら
「仕方ないですね」
とのうのうと抜かした。さらに
「まぁどうせうちの買い取り価格も安かったことですし…」
ときたらこちらもカチンと来るぜ。

結局俺の自転車を売りに来ていた男はぱっと見るだけでも15台の自転車をその店に売りに来ていた。そして、その買い取り価格はどれも非常に安かった…
刑事さんに先に警察署に向かうように言われ、自転車で向かう(とはいえ一応10km以上あるんだが。刑事さんもさらっというもんだ)。あとは警察署で書類を書いて、めでたく自転車と共に帰宅となった。
あと、携帯の空気入れやらキャリアやら後方ライトやらスピードメーターやら色々と付属品を付けていて、その額もバカにならなかったのだが、戻ってくる確率は限りなく低いようだ…民事で請求できるって言われてもなぁ…


その数日後、リサイクルショップから犯人がまた自転車を売りに来た、との通報が警察に入って、犯人は捕まった。電話でもう一回来てくれ、と刑事さんに言われ、行くと、犯人が否認しているので、自転車の写真と車体番号をデジカメで撮って(フィルムで撮ったぶんはまだ現像が上がっていなかったのだ)突きつけるようだった。

山から下りるともう犯人は自白したようで、俺は検察に送るための調書を取らされた。その時、最初に同行をお願いした刑事さんは、あの時が嘘のように爽やかだった。あと、山から下りて、つくばに寄れずに実家に行ってしまうかも、と言ったら「実家埼玉でしょ、直接そちらに伺いますよ、高速で2時間もかからないでしょうし」と刑事さんが言っていたのが印象的だった。捕まった犯人のためか検察のためか分からないけど、ずいぶんフットワーク軽いんだなぁ。


ということで俺の捜査?と警察の協力?と売り手の迂闊さ?が実を結び、自転車は無事に伯楽で日々を過ごしております。ただ、ここでひとつ、山ボケしてすっかり追及するの忘れていたけど、

Yahoo! ID "max_no1jp" こと「リサイクル マックス」は盗品を購入、販売しました。故意か故意でないかは確かめる術はありませんが、同一の個人から短期間のうちに十数台自転車を買い付けるなど、仕入れルートが不明瞭で、盗品の疑いが持たれる品を確認せずに大量に販売していました。警察の捜査には協力しましたが、依然として「前の持主とは面識がないため、使用状況等は不明」な自転車を販売しています。

間違ったことは書いてないですよん。
何はともあれ、自転車を盗まれてしまった方も少なくないでしょうが、それが多少なりとも商品価値を持ちそうなものだった場合、きちんと被害届を出し、諦めずに近隣のリサイクルショップやネット上を探しましょう。被害者が「すぐ諦める」からこそ加害者が増長している一面もあると思うからです。