星野道夫

星野道夫は数少ないOM使いのプロカメラマンだったが、そのことをことさら意識せずにいた。しかし昨日伯楽のOくんがMFカメラで写真をやりたい、だったらOMだぜ!でもペンタのMXやRICOHのMR-500も捨てがたいし、王道のFM系も意外に安くなっているし…あ、スナップやるんならレンジファインダーもいいかも、ととりとめもない談義をしていたところ、各社レンズの発色とか特性とかいう話になって、星野道夫を思い出し、写真集を久々に開いてみた。

すると、まさにズイコーレンズな、地味ーな発色。広大な風景も、青空もコントラストがなんとなく甘い。ツンドラの紅葉の写真も色彩がくすんでいる。あー自分の写真と一緒だ、と思うと言うまでもなく写真の出来には雲泥の差があるのだが嬉しくなった。彼の写真を初めて見たとき、半ば感動しつつも半ば違和感というか、ぱっとしない感じを憶えたあの感覚の正体が今更になってわかった。でも、逆にそのことが彼の作品を、氾濫しすぎて陳腐になってしまった、しかし我々素人風景写真好きには絶大な影響力を及ぼしているベルビア&ニコン&PLフィルターなカラフルな色彩、スコーンと抜けるような色、強烈ベキバキコントラストな写真から一線を画させている。いかにもこの空きれいでしょ?といった媚びるような広告写真やハイアマチュアな作品のような勝負ができない、もしくはしていない分、アラスカという土地に彼が寄せた複雑な思いや、野生動物との緊迫した瞬間が伝わってくるようだし、モノクロームのようなメッセージ性を帯びる、ような気がする。簡単に言うと見せかけで勝負できないぶん中身で勝負ってことになるのかも知れないけど、ちょっとそれも違うかな。控えめな美しさというのもあると思うし、彼の写真には彼の写真なりのインパクトがあるし。
しかしやっぱり地味だな〜(笑)でもそれでもいいんだ、って彼が言ってくれます。コダックのE100VSとか、カラフルなフィルム使うと控えめな、でもちょっとカラフルなちょうどいい案配になるし。

ということで今後も俺はOM使い続けるのでしょう。やっぱり使いやすいし、愛着のくるデザイン、メカメカな操作感はやっぱりいい。今回の「調査」でも露出計が動かなくなって慌てたのだが、スクリーン開けて針を直接つついたら治った。そんな単純さも好き。でもこの露出計、単純な平均測光で針がふわふわ動くだけで、デジタルで0.いくつとかやっている人には精度だいじょぶかいな、と言われそうな代物だが、十分ポジの撮影にも使えるいい精度してます。まあ素人撮影の話だけど。