灰谷健次郎氏死去

実は唯一直接見たたことのある、有名人と言える人というのが、灰谷健次郎氏であった。まだ小学校中学年だった頃、親父と一緒に東京から中央線に乗ると、目の前に負のオーラをまとった、というかちょっと小汚いおじさんが座っている。すると親父が「あの人灰谷健次郎!」と小声で教えてくれた。確か、既に『兎の眼』は読んでいたので、8割感慨、2割割り切れぬ思いを抱いたのをよく憶えている。

世相が流れる中、彼が取り組んだ問題?はちっともなくなっていないのに、彼のやり方とスタンスは「格好悪い」ものにされてしまった感がある。彼の死で、「左翼と理想の時代」が完全に終わったような思いにさせられた。まぁ確かに子供ならともかく、彼の作品に諸手を挙げて賛成する大人はちょっと(広義の)イデオロギーというか、世に対するスタンスを疑うが、かといって、冷ややかな目線で一笑に付すのもどうかと思う。また読んだら、自分はどんな読後感を憶えるのだろう。