あれ、EUは?

今日の読売で1面に伊藤元重のコラムが載せられていた。非常に要約すると、「日本はもっと自由貿易保護主義が日本の農業をかえってダメにしている!」

ということだが、そもそもリカード自由貿易論なんてあまりに単純すぎるモデルで、、結局は植民地主義を肯定してしまったと習ったが…で、自由貿易を進めた米英や戦後の日本、現在の中国は繁栄してきたと。ちょっと待てよ、米英がやらかしてきたことや、あれだけ激化した日米貿易摩擦は?この人は日本の近世をまんま否定する気か?そんなぶった切り方、仮にも東大の先生ですかね。比較優位論=「得意な分野に資源を回し、足りないものは海外からの輸入でまかなえばよい」ってこことだけど、そんなこと言ったら今の日本にはおもちゃ産業しか発展してないだろうし、中国ではハイテク産業なんてずっと出現しなかったろう。

看護で諸外国から人材導入大いに結構!というが、問題なのは人材の不足じゃなくて、きつい労働現場なんじゃないだろうか。それを改善せずに、人材を諸外国(=フィリピンなどなんだろうが)から導入するのは移民の調低廉な賃金と過酷な労働現場によって経済を成り立たせているアメリカと同じ。物価の違い、貨幣価値の違いは?
農業についても、彼が差額地代論を持ち出して、競争力のある農家に農地を集約していけ、というのなら、農地改革の失敗を認めることになるのでは?よくわかんないけど。農地を流動化させること自体は悪くないけど、国際的な競争力にさらす必要がどこにあるのか?EUの事例も出して欲しいところ。力のある農業者が土地集約と雇用によって事業を拡大していくのはいいけど、集落とか農村部の地域社会はどうなる?少なくとも中山間地域や山間地域からは人も農地もなくなるのでは?

あと、今の日本に「得意な分野」と言い切れるものってあるのだろうか。製造業は軒並み海外に生産拠点を移し、アニメですら海外発注している日本の「得意な分野」って?情報だってアメリカやインドに勝てるとは思わないし…(農業にも競争力のある分野とそうでない分野があるというが、競争力のある分野が俺には思いつかない)

自分が優位とみるときは「閉鎖的!」と言い、自分が不利とみるなら「日本製品ボイコット!」な諸外国に踊らされていないか?ただ、今再び古典も古典であるリカードのような論が持ち上げられてくるのは何故なのか、それは考える必要があるだろうな。