寝台特急あさかぜ

ブルートレイン第一号がついにその役目を終える。
かつては15両の客車を従え、3往復も走り、多くの人を乗せてひた走った。
食堂車やラウンジでは数々の談笑。
その寝台特急も今では乗車率3割を切ってしまった。


古びた、疲弊した車体。
冷たい折り畳み梯子。
「鉄道リネン」と刻まれた、固めにノリがかけられたシーツ。
古くも清潔な寝台に減灯の灯りが落ちる。
発車するたびに「ガタン」と大きく引っ張られる電気機関車の感触。
大枠の窓に流れる灯りは次第に少なくなり、
深夜、ぽつんと点いたプラットホームの灯りを窓越しに感じてまどろむ。
郷里への懐かしさ、旅地への憧れ。
それぞれの夢がカタカタと運ばれていく。


かつて列車には人の人生と生活があった。
列車と鉄路は夢や懐かしさの象徴だった。
同じ列車に乗る人たちはその感情を知らずのうちに共有していた。


事実上、今のJRで長距離の「旅」をすることは出来なくなってしまった。
それがたまらなく寂しい。



寝台特急は高速バスや飛行機がしのぎを削って価格やサービスを充実させてきた間、何もしてこなかった。6300円という料金は誰から見ても高いし、見合ったサービスは提供されていない。
ようは車両更新を待たずに24系の代でブルートレインの時代に幕を下ろしたいのだろう。


それでも憧れの存在であり続けたのは確かだ。